| Lord of lords RAYJEND 第1幕「覇王の胎動」 第4章+メビウスの指輪 第34話 メビウスの指輪-2- 「え──っ、許可貰えないの!?」 甲高いティエルの声が、気難しい顔つきで座っている町長の耳を突き抜けていく。 レヌール遺跡に入る許可を貰おうと、夜にも拘らずティエル達は町長の家に押し掛けたのであった。 レヌール遺跡は遺跡荒らしに対するトラップが非常に多く、無事に帰ってきた者はいないという。 「大丈夫ですわ、私達こう見えてもただ者じゃなくてよ?」 「今まで多くの者達が財宝目当てにレヌール遺跡に入って行ったのだ。 皆その様なことを言って帰ってこなかった。生きて帰って来れた者も、瀕死の重傷を負っていた」 恰幅のよい町長は、デスクの前で手を組んでティエル達を見回す。 「そんな危険な場所に、これ以上命知らずの冒険者達を入れるわけにはいかん。 先日も、丁度お前達くらいの年頃のトレジャーハンターが入って行ったが……未だ帰ってこん」 「お願い町長さん、わたしどうしても手に入れたい物があるんだ」 両手を合わせて頼み込むティエルを前にしても、町長は首を縦には振らなかった。 ブスーッと頬を膨らませるティエルをリアンがそっと制すると、含み笑いを浮かべながら前に進み出る。 「ねぇ〜ん……とってもダンディな町長さぁん、こんなにお願いしても駄目なんでーすの?」 リアンは随分とわざとらしい猫なで声を出しながら、上目遣いで町長を見上げた。 彼女は黙っていれば誰もが認める可憐な顔立ちの上に、スタイルが良い。 今まで全く相手にしなかった町長も、そんなリアンの仕草に思わずドキリとして振り返る。 「私、とってもとぉぉーっても欲しい物があるんですの。だから、お願いしますわぁ」 「わ、分かった……分かった! こうなったら我が家に伝わるレヌール遺跡の鍵も渡そうっ」 耳元で囁くようにして言う彼女に、町長は鼻息を荒くして何度も首を縦に振っていた。 「ちぇーっ。何なのあの態度の違いは。わたしが頼んだときには全く取り合ってくれなかったのにさ」 豹変した町長の態度に、ティエルは面白くなさそうに眉をしかめる。 「あまり感心する方法とは言えんが……この場合は仕方がないだろうなぁ」 呆れ果てたような声でサキョウが呟いた。 「レヌール遺跡の鍵って何でーすの?」 「うむ。曾祖父さんから譲り受けた、レヌール遺跡に深く関わりがあると言われている鍵なのだ。 これが一体何に使われるのかは知らないが……きっと役に立つだろう」 そう言うと町長は、デスクの引き出しから茶色に錆びた古くさい鍵を取り出しリアンに手渡す。 暫くまじまじとそれを見つめていた彼女だったが、天使の微笑みを浮かべて礼を言う。 「やったー、これでレヌール遺跡に入れますわ! 町長さん、このご恩は一生忘れませんわぁ」 「そ、それでだな……礼と言ってはなんだがワシに膝枕をして……」 「あなたっ!」 町長がデレデレとした顔つきでリアンにすり寄ろうとした瞬間、バンッと勢いよく部屋の扉が開かれた。 現れたのは小さな男の子を連れた、茶色の髪の女性であった。 「あなたはいっつもそーやって若い娘にうつつを抜かして……これが町長かと思うと情けないわ!」 「あ、あわわ、お前部屋に入るときはノックくらい……」 「それより先程からお隣の街の町長さんが食堂でお待ちよ。お待たせしたら悪いから、早くお行きなさい」 ジロリと町長夫人に睨まれて、彼は名残惜しそうに後ろを振り返りながら部屋をあとにした。 「……ごめんなさいね、あの人ったらスケベ心丸出しで」 町長が去ると、夫人はティエル達に静かに頭を下げる。 「あなた達、レヌール遺跡に向かうんですってね。それならば折り入って頼みがあるの」 「レヌール遺跡にあるっていう指輪を探しに行くんだ。頼みってなあに?」 リアンから錆びた鍵を受け取ったティエルは、それを色々な角度から眺め回していた。 見たところ、普通の鍵である。 「……あの、レヌール遺跡に行くのなら、彼女を捜してきてほしいのよ」 夫人が言いにくそうに下を向きながら口を開く。 「もう……5日も帰ってこないの」 「おねーちゃん、レヌール遺跡のお話たっくさんしてくれるって約束したんだよ!」 その夫人言葉に、彼女に連れられていた小さな男の子が泣きそうな表情で叫んだ。 「次の日には必ず帰るから、いい子にして待っているんだぞって……言ってたのに」 「……え、どういうこと?」 ──夫人の話はこうであった。 6日ほど前、レヌール遺跡を探索するために若いトレジャーハンターが訪れたのだそうだ。 彼女は町長を口で丸め込み、遺跡への通行許可証を貰ったのだという。 各地を旅してきただけあり、彼女の話は冒険に興味のない町長も面白いと感じるものばかりであった。 そこで是非にと、そのトレジャーハンターを家族の夕食に招待したのだ。 あまり街から出たことのないこの少年にとって、彼女の話は新鮮でとても楽しかった。 一日の内に仲良くなった少年に、彼女は帰ってくると言い残してレヌール遺跡へと向かったのだ。 ……そして、5日経っても帰ってはこなかった。 「もしかしたら彼女は罠にはまっているのかもしれません。どうか、見かけたら……お願いします」 元気のない少年の頭を撫でながら、夫人は再びティエル達に頭を下げる。 その様子を見ていたサキョウが前に進み出ると、夫人を安心させるように柔らかい笑みを浮かべた。 「困っている者を助けるのはモンク僧の掟。ワシ達にどうか任せて下さい」 ・ ・ ・ 「……ねえ、リアンったらいつもあんな事してたの? それとも太ったおじさんが好みだったの?」 町長の館を後にして、早速レヌール遺跡へと向かうために街を歩くティエル達。 半分呆れたような表情で、ティエルは隣を歩くリアンに話しかける。 「あんな事? ……あぁ、色仕掛けのことですのね。この美貌を有効に使わないと損でしょ? それに誰がおやじ好きなんですのよ。私はもっと若くて、背が高くて、優しい男性が好きなんですの!」 けろりとした顔でリアンが言った。 その様子にティエルとサキョウは呆れを通り越して、言葉も思いつかずに顔を見合わせたのであった。 +DeadorAlive+ |